2024年の都市対抗野球で圧巻の投球を見せ、**橋戸賞(最優秀選手賞)**に輝いた社会人野球・王子の右腕、九谷瑠(くたに・りゅう)選手。
一年前まで名古屋名物「矢場とん」で味噌カツを提供していた店員が、今やドラフト候補として名前を挙げられている――。
そんな“シンデレラストーリー”のようなサクセス劇に、野球ファンから熱い注目が集まっています。
この記事では、九谷瑠選手の高校・大学時代の経歴や成績、矢場とん時代の努力、そしてドラフトで指名される可能性について詳しく解説していきます。
九谷瑠のプロフィール
項目 | 内容 |
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名前 | 九谷 瑠(くたに りゅう) |
生年月日 | 1999年11月5日(25歳) |
出身地 | 滋賀県草津市 |
身長・体重 | 178cm・80kg |
投打 | 右投右打 |
所属 | 王子(社会人野球) |
ポジション | 投手 |
最速 | 153km/h |
出身校 | 滋賀県立堅田高校 → 大阪大谷大学 |
社会人歴 | 矢場とんブースターズ → 王子 |
高校時代:無名校のエースとして奮闘
九谷選手の野球人生は、滋賀県立堅田高校でスタートしました。
2年夏からエースを務め、地元では注目される存在でしたが、当時の堅田高校は甲子園常連校ではなく、全国的には無名の存在。
それでも九谷投手は地道に努力を重ね、3年夏の滋賀大会準々決勝で近江高校を相手に9回2失点完投という力投を見せます。
強豪校を相手に堂々たる投球を披露したものの、惜しくも敗退し県大会ベスト8に終わりました。
この時点では、プロや大学のスカウトから大きな注目を浴びることはなく、「地方の好投手」という位置づけにとどまりました。
大学時代:大阪大谷大学で成長
高校卒業後、九谷選手は大阪大谷大学に進学。
この大学は近畿学生野球連盟の2部リーグに所属しており、決して華やかな舞台ではありません。
しかし、そこで九谷投手は地道に成長を遂げます。
大学では1年秋から主戦投手として登板。通算35試合で10勝8敗、防御率2.22という好成績を残しました。
数字だけを見れば十分に立派な成績ですが、チームとしては全国大会への出場は果たせず、2部優勝が最高成績。
在学中に1部昇格や全国デビューは叶いませんでした。
そのため、大学卒業時にはプロや大手企業チームからのオファーはなく、「野球を続ける環境」そのものを探すことからのスタートでした。
社会人1社目:矢場とんで“味噌カツと野球”の二刀流生活
卒業後、九谷選手が選んだのは意外な道でした。
名古屋の有名味噌カツ店「矢場とん」に入社。
同社が運営するクラブチーム「矢場とんブースターズ」に所属しながら、昼は飲食店のホールスタッフとして働き、夜は練習に励む生活を送りました。
多くの選手が企業の野球部で専念する中、九谷投手は接客業と両立。
仕事で体力を削りながらも、「野球で結果を出す」という強い信念を持って努力を続けました。
その努力が実を結んだのは、2023年の全日本クラブ野球選手権。
矢場とんブースターズ史上最高となる準優勝に大きく貢献。
ストレートの最速も当初の140km/h台中盤から150km/hにまで伸び、東海地区の社会人野球関係者の間で話題の存在となりました。
王子への移籍と覚醒
2024年、九谷投手は「プロを目指すなら今年が最後」という覚悟を持ち、矢場とんを退社。
当初は独立リーグ入りも視野に入れていましたが、強豪・王子硬式野球部からオファーを受け、入団します。
この決断が、彼の野球人生を大きく変えました。
第96回都市対抗野球大会では、王子のエース格として全5試合中4試合に登板。
先発・リリーフを問わずフル回転し、3勝・防御率1.96という圧巻の成績を残しました。
さらに、準々決勝・準決勝・決勝の3連投をこなし、決勝戦では最終打者に対して151km/hを記録。
チームを21年ぶりの優勝に導くとともに、個人として**橋戸賞(大会MVP)**を受賞しました。
前年までクラブチームの一員だった投手が、企業チーム移籍初年度で橋戸賞を獲得する――。
これは前例のない快挙です。
投手としての特徴と魅力
九谷投手の武器は、何といっても最速153km/hのストレートと、変化球を交えた多彩な投球術。
投球フォームは非常に安定しており、どの球種を投げてもフォームが変わらないとスカウトから高く評価されています。
主な球種はスライダー、カーブ、カットボール、チェンジアップ。
これらを自在に操り、打者の目線を巧みにずらす投球を得意としています。
また、橋戸賞を受賞した都市対抗野球では、連投にも関わらず球速・制球ともにほとんど落ちなかったことから、スタミナとメンタルの強さも際立っています。
最終回に151km/hを出すというタフネスぶりは、まさに“鉄腕”と呼ぶにふさわしい。
スカウトの評価とドラフト指名の可能性
複数のプロ球団スカウトが、九谷投手に注目しています。
特にパ・リーグ球団のスカウトは次のようにコメントしています。
「どの球種を投げてもフォームが変わらない。ストレートはベース上で伸びがあり、制球力も高い。走者を背負っても冷静で、打者をよく観察している。年齢は26歳とやや高めだが、今年から整備された環境でプレーし始めたと考えれば、成長の余地はまだ大きい」
今年のドラフト戦線では、即戦力の社会人投手が少ない年といわれており、九谷投手にとっては大きな追い風となります。
ドラフトで注目される可能性がある球団としては――
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中日ドラゴンズ:地元・愛知の強豪チームで、社会人右腕を積極的に獲得する傾向。
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オリックス・バファローズ:関西出身選手の育成が得意。
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楽天イーグルス:社会人出身投手の補強に積極的。
この3球団が特に九谷投手をリストアップしている可能性があります。
“味噌カツ店員”から“プロ野球選手”へ――夢の挑戦
九谷選手の経歴は、まさに努力と諦めない心の象徴です。
高校では無名、大学では2部リーグ、卒業後は飲食店勤務――。
それでも夢を諦めずに投げ続け、社会人野球の頂点に立ちました。
かつて「味噌カツを運んでいた右腕」が、今では150キロを超える直球でバッターをねじ伏せる。
このドラマチックなストーリーは、多くの野球ファンの心を打っています。
まとめ
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九谷瑠は滋賀県出身の25歳右腕。最速153km/hの本格派投手。
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高校では堅田高校のエースとして県ベスト8。
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大阪大谷大学では通算10勝、防御率2.22。
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矢場とん勤務時代に150キロ超の直球を身につける。
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王子に移籍後、都市対抗野球で橋戸賞受賞。
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ドラフト候補として複数球団が注目。
10月23日に開催されるプロ野球ドラフト会議では、九谷瑠の名前が呼ばれる瞬間が訪れるかもしれません。
味噌カツの香りが漂う厨房から、プロのマウンドへ――。
その“逆転物語”は、まだ始まったばかりです。
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